第155話 Rick Wakeman 『ヘンリー八世の六人の妻』(The Six Wives Of Henry VIII)(1973)
Catherine of Aragon アラゴンのキャサリン
パーソナルな話ですが、本ブログをはじめたきっかけは、アウトドアなマイ趣味で大怪我して(!)手術&入院したことでした。
鬼のリハビリとトレーニングで復活を遂げ、何とか、もとのスポーツに返り咲きました。それを機に、ロスジェネ・ブログからは、卒業のつもりでした。
もちろん、AKBや乃木坂や、最近だと欅坂の平手友梨奈の1億分の1すら話題にもならず、ひっそりと業界(笑)から消えたつもりでしたが・・・
それが、新型コロナウイルス感染症の余波で、私のアウトドア趣味も自粛中。非常事態宣言解除まで #家にいよう(#StayHome)なので、事実上封印です。そんなわけで、ちょいと拙ブログに顔を出してみました。
前号(154話)に続いて書こうと思っていたネタはいくつもあるのですが、その一つがこれです。独り言とか戯れ言、寝言のたぐいだと思って読み流し、あるいはスルーして頂ければ幸いです。
第155号はリック・ウェイクマンの『ヘンリー8世と6人の妻』の予定でした。今こうしてウェブ上を流し見してみると、多くの方が素晴らしい解説や洞察を書かれています。なので、当時の自分の構想とは違う形になりますが、違う角度で思うところを書きつけてみようと思います。
トニー・ケイ(Tony Kaye)の後継としてイエスに加入したリックですが、『こわれもの(Fragile)』ツアーで思うようなプレイが出来ない自分に焦りを感じ、A&Mからオファーのあったソロ・アルバムでリフレッシュしようとしました。
本アルバムを皮切りに
『地底探検(Journey To The Centre Of The Earth)1974』
『アーサー王と円卓の騎士たち(The Myths And Legends Of King Arthur And The Knights Of The Round Table)1975』
『リストマニア(Lisztomania)1975』
『神秘への旅路(Rick Wakeman And The English Rock Ensemble - No Earthly Connection)1976』
までがA&Mとの契約下にリリースされた5枚です。
A&Mの創設者、プロデューサーのジェリー・モス(Jerry Moss)は当初よりリックの才能を買っていました。契約にあたってはリックの要望にこたえて、クラーク・ゲーブル(Clark Gable)が所有していたキャデラックの1957年モデルを贈ったという話が伝わっています。
さて、テューダー朝のイングランド王、ヘンリーVIII世ですが、政治的には一定の成果を収めたし、そのルネサンス人を象徴するような教養の高さで知られています。文筆家としても、ハープ奏者としても、作曲家としても名を残しました。
「6人の妻」に関してですが、簡潔に記すと
①アラゴンのキャサリン(Catherine Of Aragon)20年間の結婚生活を共にするが、王子に恵まれず離婚(※)
②アン・ブーリン(Anne Boleyn)王子が生まれず、反逆罪・姦通罪で処刑(※※)
③ジェーン・シーモア(Jane Seymour)王子を出産した直後にジェーンは産褥熱で死亡
④クレーヴのアン(Anne Of Cleves)彼女の肖像画に惚れて勢いで結婚したものの、実際に本人に会ってみると気に喰わず、半年で離婚
⑤キャサリン・ハワード(Catherine Howard)30歳年下。キャサリンの浮気が発覚して処刑
⑥キャサリン・パー(Catherine Parr)ヘンリー八世によく尽くし、国王の死を看取った
さて、「世界史」を学習する受験生に朗報です(笑)。
英国には6人の妻を覚えるための記憶法があって、
“Arrogant Boys Seem Clever, Howard Particularly”
のABSCHPの順になっています。
和訳してもナンセンスですが
「傲慢な少年たちは賢くみえる・特にハワードはね」
って(笑)
それから、6人の妻の運命はこんなふうに覚える。
King Henry VIII,
To six wives he was wedded.
One died, one survived,
Two divorced, two beheaded.
ヘンリー八世
六人の妻と結婚し
一人死に・一人生(せい)をまっとうし
二人離婚し・二人処刑され
う~む、weddedとbeheadedが韻を踏んでますね。
要するに、「離婚」「処刑」「死亡」「離婚」「処刑」「生きながらえた」の順です。
これであなたも見事、第一志望大学合格、あるいはテューダー朝ファン・クラブ日本支部の入会資格ゲットですね。
ちなみにリック・ウェイクマンはヘンリー国王の曲も予定していましたが、6曲のマテリアルでレコード満杯になったんでヤメ。出来上がってたら・・・と想像すると興味はつきない。リックの当時のほとばしる才能が曲に編み上がったら、どんな傑作が出来上がっていたことか。
あ、それと、A&Mさん、収録曲が結婚の順序通りじゃないのですが、リックの了承済みだったんでしょうか。アルバムと史実の整合性を考えると、順序の移動は微妙だったりする。
ところで、このヘンリー八世と六人の妻や、イエスのネタを同僚の英国人に振り向けてみたことがあります。けど、ご本人、全く興味なさそうだった。エド・シーラン(Ed Sheeran)とかアウロラ(Aurora Aksnes・・・ノルウェイね)も良いけどさ。「温故知新」って言葉を教えてあげたかったぜ(笑)。
今夜の一曲はオープニング曲にして、最初の妻「アラゴンのキャサリン」です。クリス・スクワイヤ、ビル・ブラフォード、スティーブ・ハウ、リック・ウェイクマンのベスト・プレイの一つですね!
ワンポイント・コメントですが、6人の奥さんのうち最初の奥さん、アラゴンのキャサリンとの結婚生活は「最長」の20年間だったのに、トラック・タイムは「最短」の3'41"です。男と女の愛の無情を感じさせられますね。
(※)そのためにヘンリー八世はローマ・カトリック教会と縁を切るというラフ・プレイに出た。そのとばっちりを受けてトマス・モア(Thomas More)は処刑される。
(※※)友人に『ブーリン家の姉妹』(The Other Boleyn Girl)2008という映画を勧められたことがあります。映画館で買ったパンフを見せてもらいました。そのキャッチコピーは「新興貴族のブーリン卿は娘のアンをヘンリー八世の愛人へと画策するが、王が見初めたのはその妹のメアリーだった。2人の姉妹の間の壮絶なバトルの背後にあったのは?」
・・・ゴシップ誌っぽくて気になりますね(笑)。
Guitar – Mike Egan, Steve Howe
Bass – Chris Squire, Les Hurdle
Drums – Bill Bruford
Percussion – Ray Cooper
Vocals – Barry St. John, Judy Powell, Liza Strike
Engineer, Mixed By – Ken Scott